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<ドイツのクリスマスの習慣を理解しよう①>

聖ニコラウスと従者ループレヒト、幼児キリスト、ヴァイナハツマン(=サンタクロース)

新潟日独協会 桑原 ヒサ子

クリスマスの季節に登場する最重要人物たちは、似ているようで違っていて、でも同じような役割を持っているようでもある。歴史的、宗教的に理解し、整理してみよう。

1. 聖ニコラウス(Sankt Nikolaus=ザンクト・ニコラウス)と従者ループレヒト(Knecht Ruprecht=クネヒト・ループレヒト)

(1) 聖ニコラウス

 ニコラウスは4世紀のトルコの都市ミュラの大主教で、貧しい人々を助け、死後、聖人としてキリスト教世界で崇敬されるようになった。船乗りと子どもたちの守護聖人。そのため命日の12月6日は、聖ニコラウスが子どもたちに贈り物をする伝統的な祝祭日:子どもたちは12月6日前夜に自分の長靴を玄関の外に置き、聖ニコラウスが贈り物を入れられるようにする。この習慣は、ニコラウスが生前、貧しくて身売りをせざるを得なかった3姉妹に窓から金の塊を投げ入れて助けた伝説を象徴している。

 子どもたちにとっては、聖ニコラウスの日は、贈り物をもらえるだけでなく、近づいてくるクリスマスの先触れとして待ち遠しい嬉しい日となっている。

(2) 従者ループレヒト

 12月6日、聖ニコラウスは従者ループレヒトを伴って現れる。聖ニコラウスが主教の立派な赤色に白の毛皮の付いた服に身を包み、優しく良い子にはリンゴや木の実(時代と共にお菓子に代わり、次第におもちゃや本に変化)を与える一方、ループレヒトは質素でみすぼらしい服装で、悪い子に罰として与える石炭やジャガイモの入った袋と、むち打ちの刑を象徴する若枝の鞭を持っている。きちんと宗教を理解し行動していなかった子どもには恐怖の日でもあった。

 バイエルン州やオーストリアでは、馬の足を持ち、頭には2本の角が生え、悪魔の尾の上に、悪い子をさらっていくための籠を背負っている。こうした聖ニコラウスと従者ループレヒトの対比にはキリスト教的善悪の二分法が見て取れる。

2. 幼児キリスト(Christkind=クリストキント)

 象徴的人物として登場するのは16世紀以降。それまでは、カトリックの子どもたちは12月6日に聖ニコラウスから贈り物をもらっていた。しかし、プロテスタントはカトリックの聖人を贈り物をする人物として拒否し、聖人崇拝よりキリストへ子どもたちの興味を向けさせるため、マルティン・ルターはプロテスタントの子どもたちは聖キリストによってクリスマス・イブに贈り物を受けるとした。(しかし、贈り物をもたらす人物としての聖ニコラウスは人々の間で、愛され続け、その習慣は残った。)

 ルターはもともと大人のイエスを考えていたが、キリスト降誕劇の天使たちからインスピレーションを得て幼児キリストに考えを変えた。それ以降、幼児キリストは、翼をもち、光輪が射し、金髪の巻毛でホワイトゴールドの衣装をまとった天使のような子として表現されている。

 しかし、ヴァイナハツマン(サンタクロース)の登場により、幼児キリストがクリスマス・プレゼントをもたらすという意味は薄れつつある。幼児キリストが未だに伝統的なクリスマス・プレゼントをもたらす人物だとみなされているのは、ほぼカトリックの地域だけで、プロテスタントの地域では幼児キリストは、サンタクロースに置き換えられている。

3. ヴァイナハツマン(Weihnachtsmann、サンタクロース)

 北・南・中央ドイツのとりわけプロテスタントの地域では、クリスマス・プレゼントをもたらす象徴的人物として一般的。サンタクロースは普通、赤色に白い毛皮の服を着た太った親切そうな老人で、白い豊かな髭をたくわえている。持ち物は贈り物が入った袋と鞭。サンタクロースには、聖ニコラウスと従者ループレヒトの性質が一人に収まっている。しかし、聖ニコラウスは実在の人物であったが、サンタクロースは架空の人物。

 サンタクロースが爆発的に広まったのは、1931年から毎年クリスマス・シーズンにアメリカのコカ・コーラが宣伝に使用したことだと言われている。